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[読みました] 落語家はなぜ噺を忘れないのか

落語家はなぜ噺を忘れないのか

最近の新書のタイトルは煽り系が多くてあれなんですが、これも一見「記憶法」に関する内容かと期待させながら全然違う方向に話が進みます。

落語家が「どうやって噺を覚えるか」ではなく「どうやって噺を自分のものにするか」がテーマです。

僕が落語を聞くようになったのは立川談笑の噺を聞いたのがきっかけでした。

談笑という人は古典落語の改作を得意としていて、基本的なストーリーはそのままで設定が現代になったり舞台が外国になったりと好き放題にリニューアルするわけです。

「えぇっ、こんなのあり?」と最初は驚いたのですがそれが抜群におもしろかった。

落語は演目で選ぶのではなく演者で選ぶといいます。

つまり同じ噺でもそれぞれ独自のカラーを出して少しずつ演出方法が変わっているのです。名人上手といわれる人は技術が上手いだけでなくそういった演出に長けた人なんですね。

本書は著者の柳家花緑(人間国宝5代目柳家小さんの弟子であり孫)が、師匠に教えられた噺をそのまま覚えることから自分自身の装飾を施すようになるまでのエピソードと、師匠小さんの十八番である「笠碁」と言う噺を通じて実際に作りこんでいくポイントの解説で成り立っています。

落語をこれから聞いてみようという人よりは、いくつか聞いて代表的な演目の筋が分かった頃に読むとすごく興味深く読めると思います。

ちょうど僕がそんな頃ですからね。間違いないです。