ちょっと古い本だけど。
故中島らもが1992年、吉川英治文学新人賞を受賞した自伝的長編小説。
今月に入って僕は自身のお酒との付き合い方について自問し続けている。
こんなことを書くと「お酒で体壊したの?」とか「お酒やめられないの?」とか心配をかけてしまうかもしれないが、決してそういう事では無いので御安心を。
たまたま休肝日継続のモチベーションアップのため思いついた「禁酒貯金」をキーワードにネットサーフィンしていると、いくつかのアルコール依存症患者のブログに辿り着いた。
生活を破綻させ体を壊し、やっとの思いで断酒に踏み切った彼ら彼女らも、最初は僕達とさして変わらないただの酒好きであったのです。
ただ、少しづつタガがはずれ、いつしか酒に飲まれるようになってしまっただけだのこと。
著者の中島らもも正真正銘のアルコール依存症。
経験をもとにしたアル症患者の心の動きや、体の変化、病院での治療などの描写は実に生々しく恐ろしい。
その恐ろしい光景は決して遠い世界の話ではなく、お酒を美味しい、飲むことが楽しいと感じる者なら「板子一枚下の地獄」なのです。
主人公の小島は入院生活の出会う人々とのふれあいの中で刹那的に生きるか摂生して残りの人生を大事に生きるのか自問し続けます。
「その二十年をくれてやれよ。そしたらこの子は、二年後に死ぬあんたと同じ三十七まで生きられる。くれてやれよ、それを」
健康を取り戻しつつあった小島が些細な事から再飲酒に陥った時、担当医がつきつけた言葉が重すぎます。
深刻なテーマで色々と考えさせられるところが多くありますが、乾いたタッチの文体と妙に明るいハッピーエンドが読後に爽やかな後味を残す名作でした。
でも作品と裏腹に中島らも自身は酒が原因で命を落としてしまうんですよね。
現実は小説より残酷。。。
参考:
- 新久里浜式アルコール症スクリーニングテスト
- 小説内で登場するアルコール依存症の判断テスト。お酒飲む人はやってみ。
- 執筆者: a-ki
- 最終更新日: 2020/01/08