これは談春の「赤めだか」に対抗した「青めだか」。
志らく本人がそう言ってるんだから間違いないでしょう。
でもそれだけじゃないんだなぁ。
もともとは師匠立川談志の全音源を弟子である立川志らくが解説するという企画で始まったらしいのですが、そもそも弟子が師匠の批評など出来るはずもないと気付き、志らく自身の青春物語に立川談志論を絡めるという特異な文体になったそうで。
この本には2つの面白さがあります。
1つ目は「もう1つの赤めだか」という側面。
立川志らくと立川談春は入門時期も近く、ライバルであり親友でもある存在。赤めだかの中でも志らくのエピソードはたびたび書かれていますが、同じエピソードがこの「雨ん中のらくだ」にも登場します。ちょうど芥川龍之介の「藪の中」のような感じですね。
赤めだかの中ではちょっと嫌なやつに描かれていた場面も、本人からすれば至極当然の行動だったり。そういった答え合わせ的な面白さがあります。ぜひ「赤めだか」と合わせて読むべきですね。
もう1つは「立川談志の解説本」という側面。
「赤めだか」の中でも師匠談志のエピソードはたくさん登場しますが、あくまで人物像が描かれているのであって落語論まで突っ込んだ話はありません。
この本で志らくはかなり深く談志の落語観を解説しようとしています。
「落語はイリュージョンである」近年、談志が良く口にする言葉ですが、この意味分かります?僕はさっぱりわかりませんでした。
要は落語だから成立する不条理な世界の表現という意味なのでしょう(合ってるかな?)
正直僕は立川志らくの落語ってあまり好きではありません。
口調は軽いし早口だし(笑)なんか芸も軽い感じがして嫌だったんですよね。
立川談志の志らくに対する評価はものすごく高い。談春よりはるかに高い。
これが理解できなかったのですが、この本でようやく分かったように思います。
志らくは師匠と同じ価値観を共有している。それももっとも深いところで。
立川流落語のイリュージョンの部分を受け継ぐのは志らくだと談志はそう言いたいのでしょう。
そのことが分かっただけでもこの本を読んで正解でした。
- 参考:[読みました] 赤めだか
- 執筆者: a-ki
- 最終更新日: 2020/01/08
コメント
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